大手メディア企業ガネット社(USAトゥデイなど220以上の出版物を傘下)が、読者と対話型で情報を提供するAIツール「DeeperDive」を導入しました。これは、同社のジャーナリズムからの情報を要約し、関連コンテンツを提案するチャットボットのような機能です。
ガネットCEOのマイク・リード氏は、ニューヨークで開催されたWIRED AI Power Summitで、「読者はプラットフォーム上で、あらゆる疑問をAIに尋ね、信頼できる回答を得られるようになりました。非常に優れたパフォーマンスを見せています」と述べました。
多くの出版社はAIとの関係に苦慮しています。自社のコンテンツで学習したチャットボットが、そのコンテンツを要約し、検索エンジンからのトラフィックを奪っているからです。リード氏は、GoogleのAI概要機能が業界全体の出版社のトラフィックを劇的に減少させていると指摘。「我々は皆、同じ映画を見ているのです。SEO最適化に主に依存するコンテンツ配信モデルには、将来的なリスクがあると認識しています」と懸念を示しました。
ガネット社はAmazonやPerplexityなどAI企業とコンテンツライセンス契約を締結しており、一方ではコンテンツ窃取を狙うウェブスクレイパーを積極的にブロックしています。DeeperDiveは、生成AI技術を活用することで、読者との新たなインタラクションを通じて注目を集められるという賭けと言えるでしょう。
このツールは従来の検索ボックスを置き換え、読者が尋ねたいであろう質問を自動的に提案します。例えば、「トランプ氏のFRB政策は経済にどう影響するか?」といったプロンプトが表示されます。DeeperDiveは短い回答を生成し、USAトゥデイネットワーク全体の関連記事も表示します。リード氏は、DeeperDiveが出力を事実情報に基づいており、意見記事からは情報を引き出さない点を強調。「我々は真のジャーナリズムだけを対象としています」と述べています。
さらに、このツールは読者の興味に関するデータも収集し、収益面にも貢献できると期待されています。DeeperDiveは広告会社Taboolaが開発しました。TaboolaのCEO、アダム・シンゴルダ氏は、複数のオープンソースモデルを微調整して開発されたと説明。6億人を超える日々の読者と約1万1000の出版社からなるネットワークのデータが活用されており、各回答は出版社のパートナーからの記事に基づき、引用元への文レベルの引用が必要で、情報源間の食い違いがある場合は出力を回避する設計となっています。
リード氏は、Taboolaと共同で、読者の購買意思決定を支援するエージェント型ツールの開発にも関心があると述べ、「当社の読者は最初から購入意向が高いので、これは次のステップです」と今後の展望を示しました。



