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YouTube AI革命

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2005年、GoogleはGoogle Videoをローンチしましたが、エンタメ業界との提携に注力し、ユーザーのアップロード内容にも慎重を期した結果、失敗に終わりました。一方、カリフォルニア州サンマテオのピザ屋の上階で数人の従業員が運営する小さなスタートアップ企業は、誰でも自由に動画をアップロードできるシステムを採用し、著作権をあまり気にせず、爆発的な成長を遂げました。

その会社こそ、YouTubeです。2006年、GoogleはYouTubeを16億5000万ドルで買収しました。これは評価額をはるかに上回る金額でしたが、結果的に歴史に残る賢明な投資となりました。現在、YouTubeは世界で最も成功した動画プラットフォームの一つであり、音楽やポッドキャスティング業界をリードし、視聴時間の半分以上はリビングルームのテレビ画面で行われています。2021年以降、クリエイターへの支払額は1000億ドルを超えています。MoffettNathansonのアナリストによる試算では、独立企業であれば5500億ドルの価値があるとされています。

そして今、YouTubeはAIという新たなパラダイムを受け入れ、その本質を変える可能性のある大きな飛躍を遂げようとしています。GoogleのCEO、ニール・モハン氏は、YouTubeのCEOとして2023年に就任。彼は、YouTubeの成功の根幹は「人々が短い動画を共有することに興味を持ち、かつそれを視聴することに興味を持っていたこと」にあると指摘します。ゲートキーパーなしで、誰でも自由に動画を投稿し、共有できるという点に、YouTubeの革新性があったのです。

Googleからの独立について、モハン氏は、Googleの一員であることがYouTubeの成長に不可欠だったと主張します。巨大企業であるGoogle傘下だからこそ、ストリーミングやポッドキャスティングへの長期的な投資が可能になったと説明しました。TikTokやReelsにはない、15秒のショート動画から15時間のライブ配信まで幅広いコンテンツに対応できる点が、YouTubeの強みです。

現在、YouTubeはGoogleのAI技術を最大限に活用しています。発表されたAI機能は、アクロバティックな映像に自分の姿を合成したり、ポッドキャストの音声からAIが映像を生成してテレビ番組を作成したりするなど、多岐に渡ります。モハン氏は、AIは単なる機能強化ではなく、「テクノロジーを使って創造性を民主化する」というYouTubeの創業以来の理念の延長線上にあると強調しています。

しかし、AIによる自動化が進むことで、創造性の真価はどこにあるのかという疑問も生じます。新しい実験的機能では、GoogleのVeo 3を用いて、「月の上で踊る100人のインドネシア人ダンサー」といったプロンプトだけで動画を作成できます。YouTubeのプロダクトディレクターであるディーナ・ベラダ氏は、AI生成動画にはラベルを付け、質の高いコンテンツが上位に表示されるシステムを維持すると説明していますが、AI生成コンテンツを完全に排除するオプションは提供されません。

モハン氏はAIの活用を、デジタル音楽技術に例えます。シンセサイザーで音楽を作成するのと同様に、AIを使って動画を作成する際に重要なのは、独創性と創造性です。AI生成率の高低にかかわらず、人間が関与しているかが重要だと述べています。しかし、今後AIが生成したコンテンツがどこまで「人間による創作物」と言えるのか、議論は続きそうです。

モハン氏は、今後3~5年の展望として、AIのさらなる活用を予測しています。YouTubeはAI技術の最先端を走り続けるでしょう。しかし、最終的な編集や判断は、人間のクリエイターの手によってなされることを願わずにはいられません。

Source: YouTube Thinks AI Is Its Next Big Bang

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